第三候 魚上氷(うおこおりをいずる)

エッセイ

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第三候 魚上氷(うおこおりをいずる)
2月14日〜2月18日頃

湖の氷の間から、魚がとびはねる時期
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暦の上では今この時期のことを、「光の春」というそうだ。まだまだ朝晩は寒いが、お昼には陽が暖かな光の端っこを連れてくるこの時期。

雪解け水のせせらぎや鳥の鳴く声で感じられる春もまた、「音の春」とも呼ばれるらしい。

光の春、音の春。どちらも、冬から春へ春めいていくときの、私たちの世界のきらめきを捉えているような言葉だなと思う。

紫にたゆたう朝の空も、夕に紅く燃ゆる薄暮はくぼも、うつくしいという言葉では足りないといつも思う。かつて「空がこんなにきれいなのに、私たちは何を求めるだろう」と詠んだが、その気持ちは今も褪せない。

うつくしい、うつくしいものを私はちゃんと見ていられるだろうか。気づけばその美に呑まれるほどのうつくしさを。見逃さないでいたい。生きるために。どれだけ心が暗泥あんでいに染まって、なにもかもに気づくことが難しくなっても。視界の周囲が黒く狭まり、考えることも笑うこともできなくなっても、うつくしいものはそこにある。うつくしいものはそこにある、ということを。

 

 

 

 

 

(初春、立春・末候、第三候 魚上氷(うおこおりをいずる))

プロフィール

1992年生まれ。京都在住。
精神保健福祉士、文筆家、英語講師、ライティング講師。
英語や京都、メンタルヘルス分野を中心に、企業等でフリーランスとして執筆を行なう。
また、塾や就労移行支援施設で講師として活動している。
ライティング、英語、英会話、カウンセリングの個別相談にも対応。
TOEIC920点、精神保健福祉士(国家資格)を保有。
死生観について在野、たまに在学で思索中。
趣味はチェロやギターの演奏、紅茶、京都散策、建築探訪、美術館巡り。
(撮影:橋本優馬)

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Nika Nishimura

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