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第五候 霞始靆(かすみはじめてたなびく)
2月24日〜2月28日頃
土が湿り気を帯び、霞が辺りにたなびく時期
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この時候は、はりつめた冬の空気が徐々に和ぎ、空気に温みが含まれる中で春霞が立つ頃とされる。だが、これを書いている今日は、またひとつ寒さが帰ってきたようだ。
2月も終わりに近くなり、三寒四温の中で暖かい日も近くに感じる。暖かくなれば、鴨川沿いに座って風景を眺むこともできるだろう。
霞が春を持ち来たるこの候だが、先だって数ヶ月来、英気に足りず、ゆっくりとたなびくように生きている。
生きる速度をまわりに合わせられないとき、できるだけ、自然に触れるようにしている。たなびく初春の雲も、夜に茫と照る朧月も、夜もすがら眠れずに瞠める宵闇も、生きるために走れとは決して言ってこない。雪の間から、土の中から萌す新芽も、それら自身は春の訪れを歓べど、それぞれの速度で芽吹いては枯死に向かっていく。
私は私の速度で、わたしとして生きていく他ないのだと、近日いよいよ思う。急ぎ喘ぎ、終の見えない胸底の重さに苛まれることも、世間の求める誰かにいつまでも成れない焦燥から艱難辛苦に耐えることも、しなくてよい。私の生命がここにある。望むと望まざるとに関わらずわたしの、わたしの生命がここにあるのなら、その生命が求めるところに誠実に生きて死んでいくしかないと、いつもこころに深く覚えていたい。
霞立つ春のような穏やかな日にはこの世を散策し、心の海波立つ日には戸内に留まりながら、いずれ立ち消える日まで。
あなたがたは、あすのこともわからぬ身なのだ。あなたがたのいのちは、どんなものであるか。あなたがたは、しばしの間あらわれて、たちまち消え行く霧にすぎない。
新約聖書 ヤコブの手紙4章14節(口語訳)
(初春、雨水・次候、第五候 霞始靆(かすみはじめてたなびく))
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