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第三候 魚上氷(うおこおりをいずる)
2月14日〜2月18日頃
湖の氷の間から、魚がとびはねる時期
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暦の上では今この時期のことを、「光の春」というそうだ。まだまだ朝晩は寒いが、お昼には陽が暖かな光の端っこを連れてくるこの時期。
雪解け水のせせらぎや鳥の鳴く声で感じられる春もまた、「音の春」とも呼ばれるらしい。
光の春、音の春。どちらも、冬から春へ春めいていくときの、私たちの世界の煌きを捉えているような言葉だなと思う。
紫にたゆたう朝の空も、夕に紅く燃ゆる薄暮も、うつくしいという言葉では足りないといつも思う。かつて「空がこんなにきれいなのに、私たちは何を求めるだろう」と詠んだが、その気持ちは今も褪せない。
うつくしい、うつくしいものを私はちゃんと見ていられるだろうか。気づけばその美に呑まれるほどのうつくしさを。見逃さないでいたい。生きるために。どれだけ心が暗泥に染まって、なにもかもに気づくことが難しくなっても。視界の周囲が黒く狭まり、考えることも笑うこともできなくなっても、うつくしいものはそこにある。うつくしいものはそこにある、ということを。
(初春、立春・末候、第三候 魚上氷(うおこおりをいずる))
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