第六十四候 乃東生(なつかれくさしょうず)

エッセイ

冬至
12月22日頃

第六十四候 乃東生(なつかれくさしょうず)
12月22日〜12月26日頃

夏枯草かこそうの別名「乃東(なつかれくさ)」が芽吹く時期。

みなみの限りをいきて日の短きの至りなればなり(『暦便覧』)

冬に至る日。太陽が限界まで南に降りて、陽のある時間がもっとも短くなる。追憶の似合ういろあいの日には、いっとう好きな漢詩を思い出す。李白の『静夜思』を。

『静かに夜を思う』李白

牀前しょうぜんに月光を看る
疑うらくはこれ 地上の霜かと
こうべを挙げて 山月を望み
こうべを低れて 故郷を思う

『静夜思』李白

日脚が短くなるということは、月脚は長くなるということ。月の霜には多く出逢うのかもしれない。牀前しょうぜんに月光が降るとき、私はどこに居るだろうか。

生きることについて考えるとき、同時に死ぬことについて考える。どう去りたいか、どんな追憶を残すかについて。バッハやラヴェルなど、音楽の大家のように名を残したいとは思わない。ベアトリクス・ポターやトーベ・ヤンソンのように、後代に残る作品を残したいとも思わない。身近な人たちに、いつまでも覚えていてほしいとも思わない。ただカフカや藤井風さんの望んでいるように、いっときの風、いっときの夕照せきしょうでありたいと思う。

僕のことは夢だと思ってください
カフカ

頭木弘樹 編『絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ』

わたしのいない世界を
上から眺めていても
何一つ変わらず回るから
少し背中が軽くなった

それじゃ それじゃ またね

帰ろう/藤井風

参考:太玄斎 訂『暦便覧』https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100265362/7?ln=ja
参考:頭木弘樹 編『絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ』https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2336.html

 

 

 

 

(仲冬、冬至・初候、第六十四候 乃東生(なつかれくさしょうず))

プロフィール

1992年生まれ。京都在住。
精神保健福祉士、文筆家、英語講師、ライティング講師。
英語や京都、メンタルヘルス分野を中心に、企業等でフリーランスとして執筆を行なう。
また、塾や就労移行支援施設で講師として活動している。
ライティング、英語、英会話、カウンセリングの個別相談にも対応。
TOEIC920点、精神保健福祉士(国家資格)を保有。
死生観について在野、たまに在学で思索中。
趣味はチェロやギターの演奏、紅茶、京都散策、建築探訪、美術館巡り。
(撮影:橋本優馬)

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Nika Nishimura

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