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第四十八候 水始涸(みずはじめてかるる)
10月3日〜10月7日頃
黄金色の穂波たなびく水田から水を引く時期
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10月のこの頃、真鴨や軽鴨といった馴染み深い鴨だけでなく、鈴鴨や川秋沙(カワアイサ)、巫女秋沙(ミコアイサ)といった種類の鴨も渡ってくる。鈴鴨や秋沙(アイサ)の多くは、真鴨や軽鴨と違い、白と黒のモノトーン調の色合いをしている。京都の鴨川も、これまで以上に鴨たちで賑わうのだろう。
渡り鳥のイメージがある鴨だが、鴨はみんながみんな渡るわけでもない。真鴨は春に北に帰り、軽鴨は春に北に帰らない*。真鴨は秋にやってきて、軽鴨はそれを待ち迎える。真鴨は今も渡り鳥だ。軽鴨は、かつては渡り鳥だったが、現在は留鳥(りゅうちょう)として一年を通して日本で暮らす。けれど、双方の身体には“渡りの記憶”がある。
鳥の羽には、身体から遠い方から初列風切羽、次列風切羽、三列風切羽がある。それらの羽の上に、雨覆(あまおおい)と呼ばれる羽が被さっている。
多くの鴨はこの内の次列風切だけ、鮮やかな青や緑の光沢色、構造色となっている。それらは翼鏡(よくきょう)と呼ばれる。渡りのとき、後続の目印となるように輝く、目立つ色をしているらしい。今は渡らない軽鴨にも、渡りの記憶としてこの翼鏡がある。
後続を導くために、あんなにも美しいものが身体についている鴨が羨ましい。
わたしも齢を重ね、誰かの前を歩かなければならないときもある。そんなとき、周りから照らされる光に呼応して、道を示すようにサファイアやエメラルドのように耀く、そんな部分が、ほんの僅かでもあればいいなと思う。
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参考文献・資料:
*真鴨は春に北に帰り、軽鴨は春に北に帰らない, https://note.com/nnwwjd/n/n61f26e7f11f6
山下 景子, 『二十四節気と七十二候の季節手帖』, 成美堂出版, 2013年. https://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415314846
(仲秋、秋分・末候、第四十八候 水始涸(みずはじめてかるる))
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